手のひらで知る世界 目は見えず耳は聴こえずとも・7
この世では不幸せとなぜ決めつける
石井 康子
pp.745-747
発行日 1979年7月1日
Published Date 1979/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918721
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ごく普通に料理するのだが……
今夜はMちゃんの来る日.夕食に何を作ろうかと,台所にある材料をあれこれ思い浮かべ,カレーにしようか,ひき肉でミンチカツを作ろうか,それともから揚げ……,と頭を働かせて夕飯の仕度に取り掛かる.私の所には電話の通訳,風呂,原稿の筆記,本を読む等々だれかの手を必要とする仕事をするために,夜友達が来て私の生活を支え続けていただいているので,夕方早く来られる人とは一緒に夕飯を食べることになり,その仕度に取り掛かる.
私が料理をするといっても,どうやって作るの?火は怖くないの?庖丁は大丈夫なの?揚げ物はどうやって作るの?水の分量はどうしてわかるの?と聞く人はまあましな方で,大低の人は頭から私が料理をするなんて信じない.大低だれかがついていて,食べることから,掃除から,何から何までやってもらっていると思っているらしく,毎週教会で会っている人々さえ‘○○さんと一緒に暮らしているの?’なんてとっぴなことを聞く.‘1人よ’と言うと‘えっ,1人! ご飯はどうするの’とけげんそうに聞く.そう聞かれては説明するのもおっくうになって黙ってしまうのが常で,‘あなたが作るのと全く同じよ’と言ったところでわかってもらえない.
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