特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第1章:呼吸器
咳嗽・喘鳴で気管支喘息と決めつけてはいけない
井上 純人
1
1山形大学医学部附属病院第一内科
キーワード:
咳嗽
,
喘鳴
,
鑑別診断
Keyword:
咳嗽
,
喘鳴
,
鑑別診断
pp.363-365
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_363
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2021年6月現在も新型コロナウイルス感染症が全国的に流行しているが,そのために「咳嗽」は社会にも大きな影響を及ぼす症状となっている.電車内でマスクをせずに咳をしている人がいたために他の乗客が非常通報をして電車が止まってしまう,受験生が咳をしているため他の受験生が別室受験を希望する,といった報道がみられる.わが国の一般住民で咳嗽という症状を有している方は約10%程度いると報告されており1),外来初診時の主訴で最も頻度が高い症状が咳という報告もあることから,咳嗽という症状は多くの人にとって悩ましい問題である2).3週間以上継続する遷延性咳嗽と,8週間以上継続する慢性咳嗽の原因疾患を調査した検討では,咳喘息が42.2%,咳優位型喘息が28.4%と,多くが気管支喘息に関連した疾患であることがわかる3).気管支喘息は「気道の慢性炎症を本態とし,変動性を持った気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳などの臨床症状で特徴付けられる疾患」4)と定義されているが,明らかな診断基準というものが存在しないため,症状や臨床所見から総合的に診断されている.喘息有症率は小児(15歳未満)で11~14%,成人(15歳以上)で6~10%であり,長期的にみると増加傾向にあることから,前述した咳嗽の原因疾患とともに呼吸器診療において中心となる鑑別疾患と考えられる.
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