なでしこのうた
お母さんの休日
塩沢 美代子
pp.125
発行日 1970年7月1日
Published Date 1970/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917542
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山形県朝日連峰のふもと,桑畑の静かな山村から,県内の製糸工場に働きにきた14歳のころ(それは戦争末期だったが),正子自身も周囲も今日のような生活が展開しようとは思いつかなかった。といってもいま格別とっぴな生活をしているわけではない。県内のある市で郵便配達をしている夫と二人の子どもとのつつましい家庭の主婦にすぎない。朝早く起きて手早く家事をやり,子どもの世話をし夫を送り出すと,自分も3歳の坊やを近くに住むおばあちゃんにあずけて働きにいくのも,このごろの主婦として珍らしいことではない。
ところがその勤め先がちょっと変わっている。山形県労働組合評議会といういかめしい名前の事務所で,仕事は主婦の会オルグというわけである。それは県内の国鉄や郵便局,電話局などの組合をはじめ,山林で木を伐っている人,鉱山で働く人,その他あらゆる種類の会社や工場で働く人たちの労働組合が,その組合員の奥さんたちを組織した会である。母ちゃんたちが暮しを守っていくために,父ちゃんの労働組合の活動について理解しかつ支援し,また住みよい世の中づくりに婦人の立場でいろいろ活動していこうという会で,正子はそのリーダーとして頼りにされている。
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