褥瘡の病理・予防・治療・4
陳旧性の褥瘡と悪性腫瘍—陳旧性の褥瘡は悪性腫瘍の発生母地ともなり得る
木村 哲彦
1
1国立身体障害センター整形外科
pp.509-512
発行日 1975年5月1日
Published Date 1975/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917250
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
通常の場合,褥瘡は原因疾患が軽快するに従い,あるいは全身状態の改善につれて治癒し瘢痕を残すものである.しかし先月号までにもその都度述べてきたことであるが,脊髄損傷を主体とする麻痺性の疾患などにみられる褥瘡は,極めて易発性であり,かつ難治性,易再発性の状態か永続するものである.そして20年以上の長期に及ぶものは,今日ではまだ全体としては多いとはいえないか,その中でも再発を繰り返している症例の中に,悪性変化を来す例がかなり高率に認められる.
現在筆者の勤務している国立身体障害センターの褥瘡を有する患者たちの場合は,全員リハビリテーション・スケジュールに乗る訓練の対象者であることから,受傷後10年以上を経過するケースには1例も出会ったことがない.しかしこのことが褥瘡にかかわる問題の中でもふれずに通り過ぎることのできない大きな問題を含んでいる以上,筆者の以前の勤務先である国立箱根療養所のケースをもとにして,褥瘡は悪性腫瘍の発生母地になり得るという事実にふれてみる.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.