学生の研究
癌の末期患者を看護して—実習期間:昭和47年2月4-15日 実習場所:目本バプテスト病院内科病棟
田岡 幸子
1
1日本バプテスト看護学院
pp.914-921
発行日 1972年7月1日
Published Date 1972/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916387
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はじめに
卒業前に3年間の学びの総実習のために,総合実習という期間を与えられ,私は特に精神的看護を必要とする患者の看護を行ないたいと思い,癌末期であり,死を直前にした○村さんを受け持ちケアを行なってきました.受け持ち時点において○村さんは自分の生命があとわずかであるということを知らされてはいなかったが,自分自身では徐々に気づきつつあり,また倦怠感・疼痛も著しく全身状態も悪化する一方で,精神的にも不安定な状態にありました.
このような状態の○村さんとよい人間関係を保ちながら,看護を行なっていくにはどのようにしたらよいのか,非常にむずかしい問題でした.私にとり○村さんをケアするのにあたっての看護の目標の1つは‘平安な死への援助’ということにありました.しかし実際にどのように援助していったらよいのか,また‘平安な死’とはいったいどのようなことなのか‘平安な死’とは患者のために必要なのか,それとも残された家族の慰め(安らかな死だった)ということのために必要なのか.まるで糸がからみ合ったかの状態のままで,○村さんの死を迎えてしまいました.受け持ってから死に至るまで10日間という短い期間の実習でしたが,この経験の中から考えさせられたことを実際の看護を通じて述べてみたいと思います.
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