臨床9年経験録
手指消毒と器械準備
村田 由紀子
1
1国立福岡中央病院
pp.93-96
発行日 1971年6月1日
Published Date 1971/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916064
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□手術室における手指消毒□
1)慎重に扱われる両手
手術室勤務ナース,外科医といえば,すぐに私たちの頭に浮ぶのは,マスクをつけて清潔な両手を大切そうにしている姿である。いったん「手洗い」が終わった手は,手術操作にのみ慎重に使うもので,清潔な手で自分の汗を拭いたり,痒いところに手をやることなどは当然許されない。術者が手術中に汗を拭いてもらっている場面は,テレビドラマなどでもよく扱われている。はじめて手術室実習に来る看護学生や研修医にとって,手術のためのこの手洗い過程は,たいへん苦痛なものである。私も最初の経験の時は,指導者のきびしい目の前でロボットのようにぎこちなく,あちこちの筋肉は痛みだし,両腕がぬけそうで音をあげたくなり,入浴時にはさらに腕の皮膚が真赤になってうらめしく思ったものだ。
しかし関係医師はもちろん,手術室ナースにとっても「手洗い」ということは何回となく繰り返されており,その技術は相当に年期が入っている。経験豊かな外科医,古参といわれる手術室ナースにとって,この「手洗い」は,毎朝の歯みがき,殿方のひげそりと同じように,習慣的に繰り返されており,ほとんど無意識的に行なわれているようにみえる。たとえ,無意識に施行されている手洗いであってもていねいに洗われた両手は慎重に扱われ,もし他の者から不潔にされるおそれのある時も,パッと素早く身をかわし,清潔な両手は必ず守られるであろう。
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