なでしこのうた
ダンプのお芳と女心
塩沢 美代子
pp.129
発行日 1970年6月1日
Published Date 1970/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914929
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“ダンプのお芳”というニックネームは口の悪い青年たちがつけたものだが,多分に好意的な意味がこもっている。たしかにあけっぴろげな性格の彼女が,体重だけは極秘にしているそのボリウムが由来にはちがいないが,澄んだ大きな瞳にこめられた正義感と強い意志で,思ったことは堂々と主張し行動するバイタリティーに対する敬意でもあるのだ。
青い海に呼応してつきぬけるように高い空の下で,長崎の町は明るい。蝶々夫人の舞台“グラバー邸”や浦上天主堂など異国情緒のなかで,忌わしい原爆被災の傷を残すこの地は,漁港としても活況を呈している。大手の水産会社の事務員として働く彼女は,たえず出入港する遠洋漁業の乗組員たちの給料計算と支払いが仕事である。
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