特集 白衣
私のユニフォーム観
小林 富美栄
1
1東京女子医大看護短大
pp.11-15
発行日 1970年4月1日
Published Date 1970/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914829
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職業のステータスシンボル
看護学生になって約1か月あまり経ったある日,私たち1年生は制服を着ることになった。それは,その時まで学校や病院のどこでもみたことのなかったものであったから,上級生の着ていたすてきな制服をながめていたものにとってはまったく意外なものであった。木綿地で明るい紺色のツーピースに白いピケの長いネクタイをつけ,白い木綿の靴下にテニスシューズというスタイルを,私たちは“捕虜になった支那の便衣隊”とか“囚人服”のようだと言い合って,何とも屈辱的な気分になった。級友が集まっていればお互いに心強かったが,たとえば食堂などで一人だけが他のグループのなかにいる時,特に歩く時には裸で衆人環視のなかを進むような恥ずかしさを覚え,一日も早くそれを脱ぎたいと思った。いわゆる本科生になれば,衣替えができるので,あのすてきな制服を着られるような地位を確保しようという動機づけが,知らず知らずのうちに起こりたかまっていたようにも思える。
水色に細い白の縞のワンピースの上に,硬く糊をきかせた白いビブとエプロンをつけ,靴屋に特別誂えで作らせた白革の靴,いかにも落ち着きの悪いキャップと,頭から足の先まで学校の規定にあった看護学生としての制服姿になった時に,私たちはあらためて学生としての地位を確実にしたことを喜びあったが,同時に4年間の道の長さがそれに伴うものであることを認識させられた。
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