漢方と看護学・最終回
漢方と精神看護
鎌江 真五
1
1鉄砲洲診療所
pp.64-65
発行日 1969年3月1日
Published Date 1969/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914406
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精神看護
最近の疾病動向は,各種細菌性疾患から,ストレス病,ノイローゼ,変形疾患など,現代病への多発増加を示していると言われています。これは社会構造のひずみが,ますます人間性を破壊してゆく表われです。医学研究も,大脳生理学,ストレス学説の提唱を契機に,社会と人間,心と身の相関性を扱う方向へと大きく比重を加えてきました。このことからも,“病いは気から”という言葉が今日持つ意味は決して少なくありません。疾病の心理的色彩を正しく把握するためには,精神主義の言葉としてでなく,客観的条件(気の乱れを生ずる諸環境)を踏まえることが大切です。気のせい≒何でもない≒ノイローゼ≒精神病と,この言葉の悪用は,今でもしばしば行なわれています。
精神看護もまた,社会状況,医学動向の変化に応じて,その内容を組み変えるなかで,さまざまな解釈,思想が入り込みやすい弱点を持っています。心と身体を切り離した精神看護ほど危険なものはないのです。この点について,漢方の持つ心身医学思想は,多くの教訓を与えてくれます。
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