看護の潮 明日の看護婦へ
わたくしの修業時代
私の世界観を変えた辺地の生活
花田 みき
1
1青森県衛生部看護
pp.26-28
発行日 1968年3月1日
Published Date 1968/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913902
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哀史さながらの学生時代
明治と昭和にはさまれた大正時代に生まれたものの宿命として,私の青春時代は一口にいって暗かった。
貧しかったから,できるだけ金がかからない方法で職業につきたいという願いでえらんだ看護婦学生時代,すでに満洲事変がはじまった。この事変がはじまる前から支那事変にかけてのおどろおどろした世情は私の記憶に新しい。きびしい規律と伝統をもってきこえた日赤の寮も時代の波に洗われ,ある夜,特高警察の捜査があり4名の退学者を出した。医大の学生などとグループで社会科学の研究会のメンバーになっていたというだけの理由であった。「少女クラブ」しか読んではいけないという寮のタブーはますますつよめられ,婦長がたびたび私物検査を行なった。押入れのふとんの間から「婦人公論」や「婦人論」などみつけられた私は,行李をひっくりかえされる検査を時どきされ,外出の制限もされた。
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