連載 新・ナイチンゲール伝・10
誤解されてきたその思想と人間
吉岡 修一郎
1
1久留米大学
pp.48-49
発行日 1965年1月1日
Published Date 1965/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913474
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19.とっつかれた大事業
ナイチンゲールはこのようにして,何ヵ月間もベッドを離れず,何年間も毎日死の危険にさらされながら,どうしても安静にはしないのでした。こんな調子では,たとえ死ななくても,一生廃人になってしまうだろう,と医者が言うのですが,しかし彼女は,仕事がすまなきゃ休まれない,しかも仕事はいくらでもある,という次第です。
仕事とは何か。スクータリでさんざん見せられたような,イギリス全体の軍関係の医療体系・病院制度のあのダラシなさを,根本から改革し整備するという,大事業だったのです。それがすまないうちに,どうして休めるか。これをほうっておけば,いつ何どき同じ悲惨事が,あのスクータリの惨状が再現しないとも限らない。つぎの戦争がおこれば,必ず再現するはずです。
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