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新しい医学と看護の役割
高橋 晄正
1
1東京大学物療内科
pp.22-26
発行日 1965年1月1日
Published Date 1965/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913467
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■医療の奉仕的性格についての誤解
私たちの住んでいる社会は,もともとは自然にできあがったもので,人間が作ったものではなかった。しかし,人間が大きな生産力を持つようになると,なるべく少ない出資と労力でなるべく多くの生産をあげようとする力が,社会を大きく動かすようになる。そして社会は急速に生産中心の社会に作り変えられる。しかし,私たちは考えなければならない。生産のために生きるのか,生きるための生産なのか,と。
気がついてみると,看護を含めて医療のありかたが,社会の近代化の風潮の中に未熟なままにとり残されているだけではなく,生産と医療との本質的な違いを考えないために起こった誤った思想のもとに,ますます正しい医療からかけ離れ,そのヒズミを急速に大きくして行っている。その蔭にあってその推進力となっているのは一つには私たちの内部に培われてきた医療における奉仕と犠牲の精神ということの誤まった理解であり,他の一つは医療における経済を物品販売の経済と同じ形で推進しようとしている医療行政の上の誤まりである。
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