看護の椅子
ある学習会に出席して
西口 俊子
1
1大阪経済大学
pp.13
発行日 1966年10月1日
Published Date 1966/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912893
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いまから10年以上前,私がまだ学校出たての研究者のたまごだったころ,看護婦さん—というよりも正確には看護学校の学生さんたちの学習会に出席していたことがある。その学習会はずいぶんながくつづいた。毎週一度,人数は10人にみたないこともあったし,それ以上の場合もあったが,ながくつづいた。私がなが年住みついたその地方の大都市をはなれてもう10年ちかいが,あの研究会はどうなっただろうか? まだつづいているだろうか——。それはともかく,私はそこではじめて看護婦さんや,看護学校の学生さんたちの現実にふれることができた。おろかにもそれまで私のえがいていた看護婦さんのイメージは,“白衣の天使” とか,“ナイチンゲール精神” とかいう表現でよばれる以上のものを出ていなかったのである。私はチューターの役割で出席していたからその学習会の最中は主としてしゃべり役であり,説明役である。しかしそのあつまりのおしまいにはいつの間にかテキストをはなれてしまい,彼女たちのかかえている具体的な現実的な問題に話題がうつっていくのがならわしだった。そうなるともはや私は聞き役であった。
看護婦さんたちの労働強化がいかに言語を絶するものであるか,私はそこで知った。それはまた看護学校の学生さんたちの不満にも直接むすびつく性質のものだった。看護婦さんの労働量が多いために,学生さんたちは二重の被害をうけるのだと訴えた。
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