世界の女性
シモーヌ・ド・ボーヴォワール—「第二の性」を中心として
大野 昌彦
pp.104-105
発行日 1966年8月1日
Published Date 1966/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912853
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『第二の性』で世界に
彼女は1908年1月パリで生まれた。ソルボンヌで文学,哲学を学びサルトルと知り合った。マルセイユ,ルーアン,パリの高等中学校で哲学を教え,1943年に小説,『招かれた女』を発表して,作家生活に入った。44年エセー『ピリュスとシネアス』を発表,それ以後サルトルとともに実存主義作家として『レ・タン・モデルヌ』誌で活躍している。小説に『他人の血』,ゴンクール受賞作品『レ・マンダラン』,自伝に『娘時代』『女ざかり』,『或る戦後』,エセーに『アメリカその日その日』,などがある。
しかし,かの女を世界的にしたのは,1949年に世に送った。『第二の性』理論編・体験編の二部であろう。「第二の性』はあらゆる文明国で女性問題を考えるさいの座標軸となりうるエセーである。これに挑戦することなしに反女性論をかくことは,学問的手続きを怠ったことになる」とまで考えられている作品である。日本でも昭和28年に翻訳され,単行本全5巻として発行された。その後,新書版となり,今は文庫本となっている。ベストセラーであったし,ロングセラーでもある。戦後のめざましい女性解放を,おひゃらかす傾向から「女子大生亡国論」まで飛び出しているここ2,3年,この本の売れゆきは静かな上昇カーブを描いているそうである。
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