質疑応答欄
消毒剤で手がアレて
中溝 保三
1
1都立荏原病院伝染科
pp.46-47
発行日 1962年4月15日
Published Date 1962/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911606
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病院内における手の消毒については,手術場での極めて確実な消毒法は別として,一般にどれだけ励行されているものか,多少疑いの眼を向けざるを得ない場合があるように思われる。たとえば,手のあれることをおそれて規定よりもうすい濃度の消毒薬をととのえることもあり得るであろうし,たとえ十分に効果のある濃度の消毒薬が準備されていても,ほんのちよつと手を浸しただけですぐ手をふいてしまうような状況もよく見かけることである。特に感染ということに普段あまり神経を使わぬような場所で勤務する時には,どうしても手の消毒も形式的になりがちで,この程度でよいのだと適当に簡略化するクセがつきやすいものである。
しかしながら反面においては,感染症が抗生剤の早期の投与のために軽症化していることから,思いがけぬ患者からナースが細菌の感染を受けることもあり得るわけで,患者の排泄物を取扱つたあとでは手の消毒を入念にする必要がある。特に最近病院内ではげしい流行をひきおこす抗生剤に耐性のブドウ球菌の問題は重大で,ナースの手の消毒の不充分のためにこの悪質のブドウ球菌を手術場,新生児室,小児病室などに持込むことがあると,重篤なブドウ球菌感染症の流行を発生するチャンスを与えることになり,その根を絶つのに一苦労しなければならない。
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