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冷房の生理
高橋 悳
1
1日本医大
pp.33-36
発行日 1961年7月15日
Published Date 1961/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911427
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冷房の使用が年々ひろがるにしたがつて,それによる種々の障害に対する訴えもまた次第に多くなつている。たとえばある有名銀行では,よく冷房のきいているところで40%程度に,冷房があまりきかないところでも25%に,冷房による身体の不調を訴える者がある。最も多いのは感冒と,のどの不快感。下半身の冷えがまた非常に多く,神経病や腰痛も少なくない。女性では種々の程度の月経異常が少なくないと言われている(近江明:労働の科学Vol 15, No. 7, P. 46-54, 1960)。このような障害が,「冷房の管理」によるもので,適切な冷房ならばなくなるものか。それにはどのような管理が必要か。あるいは,「冷房そのもの」の不自然さによる障害で冷房を使う限り避けられないものであろうか。これを生理学の立場から明らかにすることが当面の問題と思われる。これはしかし決して容易なことではない。ことに,あとの問題については生理学だけから割り切つた答えを出すことは不可能とも思われる。しかし,冷房をどう管理するのが適切かという第一の問も,結局は「何を適切というか」という点で,似たところに話が落ちて行く。それゆえ,この問題はあとまわしにして,冷房によつて身体にどういうことが起こるかというところから話をはじめよう。
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