講座
心電図の新しい知識
長尾 透
1
1社会保険中央綜合病院内科
pp.20-23
発行日 1958年7月15日
Published Date 1958/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910638
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1.心電計の進歩
電池の電圧を測るには,電池から2本の導線の電圧計につないで測る(第1図a)。これと同じように人体では心臓の各搏動毎に心臓活動電流が出ているので,人体という電池から2本の導線を電圧計に結べば心臓活動電流の電圧をはかることができる(第1図b)。しかし心臓活動電流は,搏動毎に,急激な変化をしているので,特別の電圧計ではからなければならない。この電圧計が心電計て.その針に相当したものがペン,目盛を読むかわりに,紙にこの急激な変化を記録するのである。かくして記録された心電図の形は2図のようで,その波形にはP,Q,R,S,T,U,と名前がついている。心臓の活動電流の大きさは四肢から導いたものでは約1〜1.5mVで,これは懐中電燈に入れる円筒型の乾電池の約1/1000に相当する。それ故これを普通の電池をはかる電圧計につないでもはかれないので,ラジオのように真空管を使つて拡大記録する。すなわち心電計という計器は人体の活動電流を真空管によつて拡大する部分と,これを記録する部分とからなる。昔心電図をとるといえば,被検者を金網とか鉄板で囲つた室に入れて苦心して記録したもので,記録も写真式で現像という手間がかゝり,とつてすぐに見るというわけには行かなかつた。
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