講座
腹痛の看護(Ⅰ)
高橋 百合子
1
1東京逓信病院看護学院
pp.52-53
発行日 1958年6月15日
Published Date 1958/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910629
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疼痛は自覚的症状の中でも最も患者に苦脳を与える症状で,腹痛を訴える患者の看護はその原因,医師の診断等により随分異にするので,この点十分なる知識と,腹痛を訴える患者の観察が,看護婦にとり,非常に大切である。腹痛の訴えのある患者に対しては,どこが,どの程度に痛むかその局所,疼痛の種類(圧痛,劇痛,仙痛,刺痛,鈍痛,疼痛放射等)の別を知り,痛みが持続的であるか,間歇的であるか等を観察することによつて疾病の診断,治療,看護に役立つわけである。
腹痛を訴える疾患は非常に多々あるがどんな疾患が最も腹痛を起しやすいか,その主なるものは急性腸炎,胃及十二指腸潰瘍,虫垂炎,胆嚢炎,胆石症,婦人科的疾患等である。腹痛といえば直観的に腹腔内臓器の疾患でないかと考える場合が多いし,実事として,大部分が腹部臓器の疾患が原因であるが,時として腹部臓器以外の臓器の疾患から招来することもあるということを知つておかなければならない。例えば肋膜炎の際にも腹痛を稀に訴えることもあり,脊髄神経は胸壁に分布すると同時に腹壁では,恥骨縫合まで及んでいるからである。脊髄癆患者において胃症状を見ることもあり,その他,肺の炎症でも腹痛の起ることもあり,喘息患者の発作時に腹痛を訴える場合もあるし,鉛中毒,バセドウ病等においても痛みが来ることもある。
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