随筆
キャップはみている
須谷 照子
1
1日本専売公社東京病院
pp.44-45
発行日 1957年12月15日
Published Date 1957/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910499
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「何かキヤツプについて一筆…」編集部からの電話だつた。「…どうもそのような固くるしいことは…」私は突差に身にふさわしからぬ重圧感をいだくとこんな返答をしてしまつた。何となれば,この小さな純白のキヤツプに秘める聖なる使命は,おそらく私の如き人間には生涯をかけても,果し終えない至難な努力であつたからだ—
そもそも私がこのようなキヤツプに憧れをいだいたのは小学校6年生の夏のこと,大勢のクラスメートより選抜された私はその名も「虚弱児」という烙印の下にある海浜保養所に収容されたときのことである。
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