特集 老人病の知識と看護
老人の看護
大塚 寛子
1
1東大衞生看護学科
pp.90-104
発行日 1957年10月15日
Published Date 1957/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910448
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
老人患者の看護にあたつて,看護する者の態度,老人を理解する気持が非常に大切である。最近は老人医学に対して世間の関心が高まつて居り,老人医学とか老人衞生の重要性を強調する上に平均寿命の延長という事や,人口が近い将来に増加するという事等が端的にとりあげられているが,これは慎重に考えなおさなければならない問題である。先ず看護にあたる者は直接自分の縁のない何か離れたもののようには考えず,自分の生涯の中1度は必ず相遇するところの1段階であると考える必要があると思う。そうすれば,私達は客観的ではなく,主観的に現在自分が生きてゆく上に必要な因子が老人にとつても同じように必要であると考える事が出来ると思う。
その必要としている事は,常に人から認識される事,愛情を必要とする事,安心感がもてる事,自主性をもつ事,生活の上にある程度面白い変化がある事等は老人にとつても当然欠く事の出来ない要素である事を認識しなければならない。「老人と幸福感」1)という事に関し行われた実態調査によれば,「幸福」の意義を「欲求の満足せられた主観的な状態」と云つて居るが,最も基本的な幸福の要素として個人に意識されたものが各人一様でなく,地域社会,又社会階層,生活環境,性別,文化の程度によつて差異がある事が示されている。
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.