講座
近視の医学
鹿野 信一
pp.19-22
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910190
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近視は,正常24mmある眼球の長径(眼軸)が,仲びて長くなり,無限遠よりまた光線が,眼底より手前に像を結んで了い,眼底の像は不明瞭となつた状態の眼であります。従つて,近視の人の眼球はその近視の度に応じて大きく,眼鏡を外したときは強度の近視では眼球が凸出した感じをもたせます。
この様に眼球が延びるという事は近視症状として眼底に色々の変化をおこします。軽い場合には網膜,脈絡膜の色素が薄くなり,豹紋状眼底といい多少の眼底所見の上のみの変化をますのですが,之が強度となると所々眼底に萎縮が現れ,それが,殊に網膜の中心にまで及ぶと,視力を害う事も多く,時には出血,或いは硝子体にまで変性がおこり溷濁が現れ,その溷濁が眼底に影をうつし,何もないのに眼前に虫でも飛んでいるような感じ(飛蚊症)をおこします。更に近視が強度になれば,網膜も過度の伸展の為に破れ,裂孔が出来,変性した硝子体より,液が網膜下に浸入,網膜剥離をおこす危険も多い。網膜剥離は難治の疾患であり,失明することも多く厄介な併発症といえます。
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