講座
性病の現況
大野 宰
1
1愛知県立中村病院
pp.10-18
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910189
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1.統計より見た性病
性病予防法の第6条に医師は性病患者を診断した時には24時間以内に管轄する保健所長を経て必要な事項を都道府県知事に届出なければならないと云う義務をおわされている。第1表はこの届出に基くわが国の性病患者数を示したものであるが,これによると戦後性病の届出が最も多かつたのは昭和23年の473,822名であり,それ以降は次第に減少し昭和30年は167,950名となつている。勿論これ等の患者はあくまで届出による限られた者だけで,数年前東京都が一定期間を限り健康保険,医療券による性病患者に就て実際にどれくらいの割合で報告されているかを調査されたことがあるが,それによると僅か1/10しか届出られていないと云うことが判つたのである。
これに関連あるものとして厚生省統計調査部が昭和28年7月29日に於ける全国病院の約19%及び診療所の約2%を対象に当日の入院,外来性病患者に就て調査しこれによりわが国に於ける年間の推定患者数を算出したものを発表している。それによると昭和28年の性病患者実数は約63万人で,年間延795万人の患者が診療を受けていることになつている。尚患者の約70%は男子であり,年齢では15歳より24歳迄が26万人,25歳より34歳迄が18万人となり,性病新患者実数の約85%が之等青少年層で占められている。
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