Nursing Study・10
慢性砒素中毒症の看護について
能勢 貞子
1
1国立舞鶴病院附属高等看護学院
pp.6-11
発行日 1956年9月15日
Published Date 1956/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910173
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本症例を選んだ理由
夏休みも終つて小児科病棟へ実習に出ました。丁度8月24日の新聞の朝刊に「人工栄養児に奇病」という大きな見出しで,岡山地方で,1歳未満の人工栄養児に肝臓腫大や貧血を起すなど不思議な症状を伴う奇病が発生し,3名死亡という記事を読みました。翌25日「奇病の原因は森永ドライミルク」との見出しで,又々新聞紙上やラヂオをにぎわせ,26日には三面記事の1/3程度に,母親がミルクの罎を片手に乳児を抱き,保健所へ不安そうな顔付で大勢押しかけている写真等が出ていました。増々拡がる粉乳禍,そのうち当院外来小児科へも驚いた人達が大勢来られ,一度に5名が入院いたしました。この事実は社会的に一大センセーシヨンをまきおこし,大きな社会問題となるばかりでなく,一時に多数の乳児砒素中毒症患者を発生しました事は,医学史上も稀でありますので,この機会を通して少しでも詳しく知ることが出来,よい看護をさせていたゞきたいとおもい,此の症例を選びました。
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