講座
神経痛の予防と治療
斎藤 泰弘
1
1東大物療内科
pp.14-19
発行日 1956年3月15日
Published Date 1956/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910075
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1.神経痛とは?
まず神経痛というものの概念をはつきりさせるために多少理屈つぽいことを書くことをおゆるし願い度い。
「いたみ」と云うものは総て神経系の病的な興奮によつてひきおこされることは,今更あらためて云うまでもないのに特に「神経痛」と云う名前で一括される謂わゞ特定の「いたみ」が臨牀医学では一個の纒つた対象として存在している。その「神経痛」とはどんな「いたみ」を云うかと問おれると実は答は仲々難しいのである。神経痛の特徴として挙げられる点は,第1に特定の知覚神経に関係してその神経の炎症その他の疾病や或いは直接的な刺激によつておこされる「いたみ」であり従つて特定の神経の幹又は枝の分布域に沿つた疼痛域を持ち,第2に痛みが常に一定の強さではなくて著しい弛張がみられ多くは疼痛発作として患者を苦しめ,第3に痛みの性情は鈍いものではなく多少とも鋭い激しいたちのものである。従つて「神経痛」とは病理解剖学的には独立した1個の「疾患」ではなく一つの「症状」なのである。知覚神経に異常な刺激が発生しさえすれば神経痛がおこるのであるがその際神経或は神経鞘に炎症性の変化の認められる場合も又全く認められない場合もある。前者は厳密に云えば神経炎と云うことになるが臨牀的に神経痛と区別することは困難で共に神経痛として取り扱われている。
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