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看護婦を全部入替えた話
千種 峯蔵
pp.38-43
発行日 1955年9月15日
Published Date 1955/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909912
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ベット生活が長くなると,一寸したことを気にしたり,一寸したことで感激したり腹を立てたりする話は,既に「長期療養者の心理」の中に書いた通りであるが,そのイライラした感情の対象となるのが,自然,一番身近かにおつて,一番生活と縁の深い看護婦である。そんな感激や立腹を繰返している間に,自然に思出されるのは,20年前,自分の手でやつた,一病院の看護婦を全部入替えた話であつた。
当時私は満鉄会杜の衞生課長であつた。満鉄会社は,三大臣の命令というものによつて,鉄道の附属地に対して,警察以外の地方行政を行つておつた関係上,衞生課長は,診療機関の経営,管理のことだけでなしに,同時に公衆衞生や防疫の業務も,担当しておつたのである。その為め,とかく,火急を要するペスト,コレラ,発疹チフス,赤痢等という伝染病の防疫や,時事問題とか他の地方行政とかにつながりをもつ,公衆衞生や学校衞生や労働衞生に引廻されて,病院の管理,経営の方は手拔き勝ちで,殆んど院長任せという形であつた。このことは,当時,非常に残念に思いながらも,どうにも手の廻らない実状であつた。
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