シネマ解題 映画は楽しい考える糧[72]
「日本以外全部沈没」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.534
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102892
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「日本以外全部沈没」した時に問われる,人間としての真の倫理観
「日本沈没」をタイトルの通りひっくり返した筒井康隆原作によるパロディー映画.小松左京の大ベストセラーである原作の「日本沈没」は過去2回映画化され,いずれも大きな話題になりました.特に1973年のオリジナル(森谷司郎監督)公開時には,社会現象にもなったと記憶しています.幼い頃,映画館で怖い思いをした方もいるのではないでしょうか.「日本沈没」はシリアスなSFスペクタクル大作で,人間の苦難や運命との戦い,勇気や自己犠牲の尊さを描いていました.
一方,こちらの作品は人間の他の方面の特徴をブラックに描いていきます.つまり,権威主義,権利欲,狭量さ,利己主義,無慈悲さなどです.物語には博愛主義や隣人愛の出番はありません.けっこう過激なメッセージが込められているので,人によっては気が滅入るかもしれませんが,基本的には気楽に,人間の馬鹿さ加減を笑い飛ばす映画になっています.
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