発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909703
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青々と澄む美しいネツカ河をはさんで,両側に迫る緑の山を背に,細長く展ずるハイデルベルグの町,14世紀には,はや現在の大学が創設されたという歴史を誇る古都ハイデルベルグは,尖つた屋根,赤い煉瓦,こけむした石の建物など,古い建物が多く,緑の丘を埋めておもみのある落付きをみせている。此のあたりは,西独乙では,「ネツカヴアレー」とよんでいる程美しい地区で,このネツカ河は遠くラインに合流する。
町の中央を流れるネツカ河に三つの大きな橋がかかつているが,その最も下流に近い方向のは最も古い橋で,14世紀頃これが唯一の橋で,ハイデルベルグの町にはいるただ一つの入口であつたといわれる。橋の袂には,町に入るトリデの物見窓のついた双塔が尖つた屋根をつけて嚴然とたち,これをすぎて町に入ると,後方の山の中腹に,ハイデルベルグの古城がある。何度かの戦禍にあつて,傷ましい姿をしているけれど,それ丈に町をまもつて来た歴史と共に,町の人々の心のよりどころ,魂のふるさとになつている。歴代の王者の像が建物の外壁を飾つているのも一部のこつているし,密室や,迷路もそのまゝになつていて面白い。が,廃墟の空虚さは取りのぞくべくもない。何となく,わびしい気持になる。古城の中庭は,野外音楽場になつていて,夏は一週三回程,夜間にモーツアルトやシユーベルトのもの絃楽演奏するという。音楽好きなドイツ人のたのしみが思われる。
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