講座
絶対安靜
橋本 寬敏
1
1聖ロカ国際病院
pp.10-12
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909649
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どんな疾患の治療にも安静が必要であるが,これを特に重要とする場合に,「絶対安静」を求める。しかし「絶対」といつても,これは人の力で実現しうる極度の安静を意味するに過ぎない。人為的に活動を直接制限できるのは,随意筋による運動だけであつて,呼吸器,循環器,消化器など,自律神経の支配を受けている器官の活動は,患者が自分で自由に制限できないから,如何ほど,厳重に命令はしても,その通りにはならない。全身の運動を極度に制限し,精神をおだやかにし,或いは食物を制限することによつて,幾分か活動を少くするに止まる。時としては鎮静剤の投与によつて初めて,所期の目的を達する。
大体に於てわれわれの求める絶対安静の状態は,患者が熟睡した状態である。それで絶対安静を求める場合には,患者をなるべく,多く安眠させるようにする。そして,患者が目をさましている時には,あらゆる刺戟を避けて,静臥させ,眠つた時に似た状態におくようにつとめる。
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