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ヨーロッパところどころ—私の旅記日から
小沢 龍
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1厚生省統計調査部
pp.114-118
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909670
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☆美に対する感覚☆
イタリア「ローマの休日」という映画にローマ市の美しさが立派に描き出されている。実感と映画の違う処は,実物には映画程の明るさがなく,建物の多くが赤褐色であるため渋味が勝つて寧ろ暗い感じのすることである。しかし全市は同じ調子の構図と色彩で一体化され,2千年前の古蹟であるコロシウムさえ異物感を与えず,街全体が一塊の美術品のように感じられた。
ソレントからカプリ島へ旅行したがここでも,同じことがいえる。切り立つた海岸の上にホテルや別荘が沢山立ち並んでいて,一寸日本の熱海を思わせる風景であるが,これらの建造物がすべて脚下に屹立する巖石や周囲の風物と立派な階調を示し,全体がまとまりある美観を呈していた。
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