Japanese
English
綜説
靜流還流
The Venous Return.
友松 達弥
1
Tatuya TOMOMATU
1
1神戸医科大学中院内科
1Department of First Medical Clinic of Kobe Medical College
pp.130-134
発行日 1955年3月15日
Published Date 1955/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200213
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心臟が血液を全身に送り出すポンプである以上送り出された血液をこのポンプに与えることが不可欠であることは自明である,この血液供給が静脈還流である,従つて心臟の血液駆出は一つに心筋の收縮に基くが,静脈還流する血液量はこれと表裏一体となつて搏出量を左右する。こゝに静脈還流の重要性がある。
静脈還流の機転については,古くは心筋に自動的に拡張する筋線維或は弾力線維を仮定した時代もあつたが,長く支配的であつた考えは所謂Vis a tergoである。即心室より駆出される血液に与えられた力が減衰しながらも,動脈側から静脈側に及んで血流を推進させるというのである。この力は当然血圧となつて現われるであろう,しかし動脈の血圧上昇即高血圧症に於て心不全がない限り静脈圧の上昇は見られない,又Vis a tergoの増減に応じて静脈還流も増加,減少するであろうから心搏出量従つて又分時容量も増減しなければならない。しかし貧血やバセドウ氏病の場合の分時容量の増加は必ずしも静脈圧の上昇を来たさないし又Vis a tergoの減少は例えば冠不全,心不全に於て有り得ようが,静脈還流の減少を招くと考えられるが,事実かゝる場合常に搏出量の減少が結果されるとは限らないし,血圧の低下も起らない。これらの事実とは別に次の事がより根本的である。即ち細動脈乃至毛細管領域に於ける抵抗乃至摩擦は大である為Vis a tergoはこゝで大部分が消費されてしまう。
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