医学のあゆみ・35
癌のくすり
杉 靖三郞
pp.53
発行日 1954年9月15日
Published Date 1954/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909643
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去年の8月に,ストマイ発見者のワクスマン博士がすばらしい癌のくすりを発見したと,オーストラリヤの癌研究者スモールペイジ博士が,“9月1日を期して発表する”と声明したときは,ちよつとセンセイシヨンをひきおこした。それはアクチノマイシンという抗生物質であつたが,出てみたところあまり大したものでなかつた。あれから1年,あまり効いたという報告もきかない。
前には,癌に効く薬があるなどといおうものなら,インチキだとして片付けられたのだが,—それは,結該でも同様で結核に効く薬,といえばインチキの代名詞でさえあつた。というのは,ストマイが出るまでは,どれも効力がなかつたからである。—ところが,結核のストマイが出てからパス,チビオン,ヒドラジドなど有効なものがつきつぎと出て,結核に薬の効くことがはつきりわかつたので,癌の薬も,頭からインチキだとはみなされなくなつた。そして,癌に効く薬もあるはずだという信念はもはや動かすべからざるものになつたこの1年間に,癌の薬といわれるものもいくつか出来た。
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