患者の訴えに對して
鼻のつまり
大石 公一郞
1
1東大分院耳鼻科
pp.11-14
発行日 1953年6月15日
Published Date 1953/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907308
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先ず訴えそのものゝもつ意義を,はつきり認識することが患者の訴えに答えられる先決條件である。
患者の訴えが「鼻のつまり」の代りに他の病的現象例えば「頭の痛み」とか「胸の苦しみ」であつても單に訴えの内容とニユアンスに相違があるだけで,訴えそのもののもつ意義は少しも變らない。從つてこの意義をはつきり認識することが患者の訴えに答えられる先決條件である。訴えと云う言葉は,個人團體を問わず何等かの原因による苦痛損害の解決を求める手段と云う共通した意味で,廣く使われている。例えば「世論に訴える」「警察に裁判に訴える」「……如何なる手段に訴えても……」から「……に訴えるような眼,聲,振舞い」「……の氣持を……に訴えても……」「患者の訴え」のように使われるが,訴えの起る時と内容で受動者の反應に違いがあるけれどもいずれも自己の中に壓縮し切れなくなつた苦悩解決手段の積極的表現とみて差支えないであろう。
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