- 文献概要
めがねというものが,何時の頃から發明されたものかは詳しく知りませんが,現在では,或特定の人にとつては生活必需品の一つ,いえ,體の一部分になつてしまつています。ものを見る時だけでなく,年がら年中,一日24時間,お風呂に入る時でもはづす事が出來ない人もあるのですから,こんな人は水泳する時もかけているのかしらと一寸疑問も出て來る位です。一口にめがねといつても,種々と種類はあるので,近眼鏡,老眼鏡,亂視のためのめがね,‘はては天眼鏡,虫めがね等々もつと複雑なレンズを應用しためがねもあるわけです。併し,いづれにしても,要するに肉眼だけでは足りない分を補うためにかけるのであつて,めがねをかけたからといつて,普通以上によく見えるわけではないし,自然の大きさを擴大したり,近いものを遠くみたりするわけでもない,むしろその反對で,めがねがないと間違つてみえるのがかけたために正しくみる事が出來るためなのです。ところが世間には,不思議なめがねがあつて,それをかけると,ピンポンの玉がフツトボールになつたり,縫針が刀劍になつたり,或時はまつ直なものがくねくねと曲つて見えたりすることがあるようです。又,色めがねというのがあつて,お醫者樣にきくと,眼質の弱い人のために,普通の光線が強すぎないようにしてあるものだそうですが,別の種類の色めがねをかけると,白いものが黑くみえたり,明朗なものが不快にみえたりするそうです。
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