発行日 1951年9月15日
Published Date 1951/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906929
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私の住んで居ります處は,廣島縣の瀬戸内海の一小島,周圍が4里,人口約3千のわびしい農村で,この村が4つの部落を別ち,村の中央に唯一の醫院として存在し,村醫,中小學校醫,健康保健醫と何から何迄やつて居られる先生はもう66歳の老ドクターで,私と他に同年のナースが一人,たつた3人の醫院でございます。2人の内1人は診療係をすれば,他の1人は本宅のお手傳いと毎日交互に致して居ります。毎朝大體6時に起床,身仕度をととのえ,診療所係は私室,患者待合室,藥局,診療室,前庭,醫院の周りの道路等の掃除をして8時前朝食,服の上に白の豫防衣を着けて9時過に診療開始,お腹の痛い人,手を怪我した人,熱のある赤ん坊,妊婦さん等樣々な患者の診療の手博い,それから藥局に入つて藥を作る手傅い,服用法を教えたりします。午前中の來診患者の診療が終ると午後は往診です。
先生が老體なので私達が一緒に往診カバンをさげて出かけます。4部落の中2つの部落を1日に廻ります。田舍の事なのであちこちにぽつんぽつんと離れた患家を一軒一軒廻つて行きます。2時頃に家を出てやつと夕方6時過に歸宅,夕食は7時半か8時頃になつてしまいます。それから今日1日の診療の整理を濟せ,9時頃やつと開放され,自分の時間になって自由に振舞われほつとして室にくつろぎ,衣類の繕いや讀書,お手紙を書いたりします。お風呂のある日は10時過に入浴,就寝は12時過になつてしまいます。
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