隨想
〟雨にもまけず〝
古屋 かのえ
pp.31-34
発行日 1949年6月15日
Published Date 1949/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906479
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どうも庶務課へ行くのが億劫で,萬已むを得ぬ時以外私はめつたに庶務課に行つたことがありませんでした。
少しつり上つた鋭い眼,二段になつてゐる高い鼻梁,その下に豐な唇をへの字に結んだ顔,そしてその相貌ををさめておくのに何の不足もない體躯を,政治家然と──但し民主主義でない頃の──庶務課の頭席において,ひびきのある大きな聲で物事を處理されてゐるその課長が,第一私にはあまり好もしくなかつたのです。
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