発行日 1951年3月15日
Published Date 1951/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906818
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トラホーム(トラコーマ)と言う病氣は人類の眼部だけを犯す特種な傳染性疾患であります。然も直ぐ隣接している鼻腔も之に次ぐ咽喉部も犯されないのであります。最近の研究に依りますと子宮頸管にはトラホームに類似した疾患が起ると述べられて居ります。其は新産兒に丁度淋疾性結膜炎に非常によく似た急性結膜炎が現われる事があります。其結膜を擦過塗抹標本とし,之をギームサ染色液で染色して見ますと,其標本中の頸管粘膜上皮の中にトラコーマ病原體と考えられている包括小體が多數に見られるのであります。其で私共は從來此ような結膜炎を包括小體性結膜炎と呼んでいたのであります。虚が石原忍博士(元東大教授)及其門下の人々がトラホームに就て色々接種實驗をして見た結果トラホームに罹つている結膜の組織をすりつぶして乳劑として健康な子宮頸管にすり込んで經過を見ますと此處にトラホームと類似の所見を示す變化が現われることがわかつたのであります。
次に包括小體性結膜炎を患う新産兒のお母さんの子宮頸口を調べると此がトラホームを傳染させたものと同樣の變化を示しているのが見られました。そして此處からも包括小體が證明出來たのであります。其でトラホームと言うものは人眼を犯すが又子宮頸管をも犯すものである事がわかつて來ました。
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