特集 慢性疾患—明日の公衆衛生のために
トラホームの化学療法
大竹 卓一郎
1
1順天堂病院眼科
pp.99
発行日 1956年5月10日
Published Date 1956/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201183
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トラホーム(以下ト)は一般クラミドゾアトラコマチス(Chlamydozo a Trachomatis)という一種の大型ヴイールスにより起る慢性伝染性の結膜角疾患と云われている.このヴイールスは一定の発育環を有しており,その過程に於て一種の細胞封入体を形成する.この封入体が,従来からプロワツェク氏小体と云われていたものである.然して,この病原体がズルフォンアミド剤(以下ズ剤)や抗生物質に感受性のあることが知られた一方に於て,高級ズ剤や抗生物質の相次ぐ発見により,トの化学療法は著しい進歩を見た.
現在,一般に行われているトの治療法は,抗生物質を第1とし,必要あれば更に高級ズ剤を併用し,尚難治の場合,或は,治療期間の短縮を期する等の場合には物理的療法(手術)等をも併せ行うのが普通である.特に急性のもの,刺激症状のあるもの,及びパンヌスにはズ剤の併用は極めてよい.然して抗生物質は局所的に,ズ剤は全身的に使用するのが原則である.(抗生物質としては,オーレオマイシン,テラマイシン,アクロマイシン等が,ズ剤としては,ダイアジン,チアゾール,ドミアン,サイアジン等が普通である)即ち,抗生物質は0.5〜1.0%の軟膏を1日3〜4回点眼,1〜3カ月続行するのが一般的である.溶液は点眼が容易であり,点眼後の不快感もなくてよいのであるが,一般に安定性が低く効果も亦軟膏に幾分おとる.
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