発行日 1950年7月15日
Published Date 1950/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906676
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雲といえば冬の滿州を思いだす。ハルピンから汽車に搖られること20時間餘,國境の町マンチェリーには數時間というハイラルに旅行した時のことである。朝方驛に到着して汽車を降り改札口を出て踏切りにさしかゝつた際,幾臺かの汽罐車が線路の入れ換えでゆつくり目の前を往復していた。その煙突から吹き出した白煙が横になびいて頭の上を流れていつたが,ふと見ると確かにこの白煙から非常に小さな雪の結晶が,折からの朝日に照らされてキラキラ輝きながら落ちてくるのが見えたことを憶えている。
これは人工的に雪を降らせたようなもので煙と共に空中に吹き上げられた湯氣が,零下40℃近くの低温大氣中でたゞちに氷の結晶に變り,それが風もない靜かな空中を落下して來たものである。その一つ一つの粒は小さくて殆ど目に見ることは出來ず,光に照らされてキラキラ輝くので初めてわかる程度である。
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