ホスピタル・トピックス 建築
明治村の清水医院
伊藤 誠
pp.35
発行日 1977年5月1日
Published Date 1977/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206223
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明治村には既に紹介した日本赤十字社病院と名古屋衛戍病院のほかに診療所がひとつある.長野県木曽郡大桑村須原にあった清水医院である.須原は中仙道の宿場町で,清水医院はその街道沿いに建っていたという.院長の清水半治郎氏は,明治元年須原に生まれ,上京して小石川春日町の済生学舎に学んだ後,明治28年医師免許をとって故郷に帰りここで開業した.近代医学を修めた医師として,また患者に親切な先生として多くの村人に慕われ,医院は常に門前市をなす繁昌ぶりだったと伝えられている.
建物は明治30年代のつくりで木造2階建て,外観は擬洋風,内部は和風の折衷様式である.外壁は漆喰塗り,屋根はこけら葺き,1階が診療部分で2階を住居に当てている.正面からみると,2階には縦長の櫛型窓が5つ等間隔に並び,1階では左端に出入口,その右,待合室と診察室に1つずつ大きな窓が配されている.いずれも漆喰固めの分厚い額縁で囲まれているのが特徴的である.軒の深い伝統的な木曽路の家並の中にあって,これこそ新時代の医院にふさわしい文明開化の装いだったに違いない.
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