連載 道拓かれて—戦後看護史に見る人・技術・制度・3
看護婦の全寮制度
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.260-263
発行日 1997年3月1日
Published Date 1997/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905299
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数年前,看護婦不足が頂点に達した頃,独身の看護婦たちを引きつける条件の1つとして,設備の整ったプライバシーのある住宅を付加価値とした労働条件を提示した病院があり,その足元にもおよばない病院の幹部たちをうらやましがらせた.個室どころか,バストイレ付の2LDKで室料2万円とか,テレビや冷蔵庫も備えつけとか.一方,看護婦が本当の専門職を目指すなら住宅はもちろん,ユニフォームも靴も自費で購入し,クリーニング代も負担すべき.要は,そうした費用を支払う能力を満たす給与が前提である,という意見が述べられたこともある.
看護学校や病院を運営するためには必須の付帯設備であった寄宿舎も,最近では希望者のみが利用するか,または年齢制限などがあるのが普通となった.しかし,ここまで来るには,やはりさまざまな道を経ている.現在は,看護の基礎教育の世界でもほかの学生同様に,自宅やアパートから通学する看護学生も増えてきたので,古くからの看護婦の全寮制の状態など,想像もつかない読者も増えているように思う.
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