研究と報告
痴呆性老人の居場所と俳徊
大橋 美幸
1
,
水野 弘之
2
1大原記念病院
2京都府立大学住居学科
pp.1048-1052
発行日 1996年11月1日
Published Date 1996/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905220
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はじめに
人は,自分のものと感じる場を,自分の気に入るように飾り,しつらえ,管理を行なう.その結果,その場は自然にその人らしさを反映したものになる1).これをPersonalization(自己表出性)といい,このように外面化された自己は,住まい手に安心感を与え,住まい手のアイデンティティを守るはたらきをする2).老人が施設に入所した場合,老人は,自分の過去からの生活の連続性を保証する物を,居室に持ち込み,飾り付けることによって,居室に「身の置きどころ」を形成する2).身の置きどころはPrivateな引きこもりの場となり,よりPublicな空間への物のあふれ出しをへて,老人は,施設に「生活の場」を再建していくのである3).
しかし,これは,健常老人のシナリオであり,痴呆性老人は,Personalizationが難しく4),居室を拠点としながら,よりPublicな空間へとつながる5)「生活の場」を再建する経過がみられないという報告がされている.
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