患者さんの口の中にはヒントがたくさん詰まっている

　私はごくふつうの町の開業医として，21年間歯科医療に従事していますが，最近になってやっと「歯医者っていい仕事だな」って思えるようになりました．たとえばお年寄りの家に行って入れ歯を調整すると，噛み合わせが正しくなるので昔の顔に戻ってきます．するとそのお年寄りは鏡を見るようになって，やがて笑顔がではじめる．もちろんその一方で口から食べる喜びを思い出し，健康状態が驚くほど改善してくる．「歯ってすごい．それだけで生活全体が変わってくる」という気がいつもしています．

　横浜の加藤武彦先生に訪問歯科診療の喜びを教えていただいてから，私は積極的に地域の老人たちにかかわることになりました．加藤先生たちのご努力もあり，在宅における口腔ケアの重要性は最近いわれるようになりましたが，病院内でももっと注目されてもいいと思っています．