特集 看護に活かす経済感覚
「看護経済」から病棟への視線
金井Pak 雅子
1
1国際医療福祉大学保健学部看護学科
pp.705-709
発行日 1996年8月1日
Published Date 1996/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905141
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「経済」って,何?
「経済」という言葉が,医療に携わる者にとって馴染みが薄いのはなぜだろうか.経済と聞くと,すぐ「お金」という言葉が浮かんでくる.お金は我々の生活の営みのなかで不可欠なものではあるが,病める方々を相手にする場合,「お金」という話題はどうもそぐわないという感覚が根づいている.確かに,患者の命に直接関わっている医療職にとって,お金でその価値を決めたり,判断するなどできはしない.「人間の生命」と「お金」とを比較対比することは不可能である.当然であるかのように,看護職も,この「天秤論理」から自分たちが日々行なっている看護行為はお金では語れないものであるという結論を導き,「経済」を話題にすることはなかった.そして,看護職の間では,「経済」はあたかも必要なき存在であるかのように扱われてきたのである.
このようないきさつに至った原因は,《経済=お金》という狭義の概念が根づいてしまっていることにあるだろう.経済というと,すぐ金銭的なことが話題になるので,人々のなかに「経済とは,お金(特に現金:cash)のやりとりのことである」という誤解が生じているのである.
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