特別記事
お礼奉公訴訟の意味するもの
荒川 英幸
1
1京都第一法律事務所
pp.140-143
発行日 1996年2月1日
Published Date 1996/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905012
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あまりにも明快な裁判
去る9月22日,京都地方裁判所で,「お礼奉公」に関する判決がありました.看護学校卒業後,お礼奉公をしなかったために卒業証明書などの交付を拒否されたとして,4人の看護職が学校を経営する医療法人を訴えた訴訟で,裁判所は原告らの主張を全面的に認め,証明書の交付とともに慰謝料の支払いを命じたのです.
この事件の特徴は,なによりもその明快さにあります.弁護士は,事件活動において,複雑な事件の本質をいかにわかりやすく裁判所に訴えるか,いきいきとした説得的な証拠を発見して法廷に提出するにはどうしたら良いかということに苦労するのが普通です.しかし本件では「学校を卒業したのに,卒業証明書をもらえないのはおかしい」という素朴な実感に尽きるわけで,判決もこの実感に基づく内容といえます.
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