連載 買いたい新書
—山崎摩耶著—日本で老いるということ—在宅ケアからの出発
西田 真寿美
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.172-173
発行日 1994年2月1日
Published Date 1994/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904473
- 有料閲覧
- 文献概要
“老い”を通して“生きるというこどを考える
「人は誰でも自分なりの”生と死"の美学を持っている.著者は数多くの在宅ケアの体験を通して,そのことをしっかりと読み取っている.その体験的リポートである本書は,迫り来る老いと死をいかに生きるかを考える手がかりを具体的に与えてくれる.まさに時代の要請に応えた問題提起のドキュメントだ」これは本の帯に書かれた柳田邦男氏による推薦の辞である.老いと死をいかに生きるかについて語られたものは,今やおびただしい数の本が書店にならんでいる.その中で本書は,著者自身の十数年におよぶ訪問看護という職業的体験を通して「世代の伝承行為としての老人ケア」の意味,そこからなげかけられる生きるということの意味,看護の可能性と責任を問うている.その語り口からは,老いの持つ影の面をも光に変えてしまうような力強さとあたたかさが伝わってくる.
老人ケアといえば,寝たきり老人,痴呆性老人,介護に疲れ果てた家族等を思い描く人が多いのではあるまいか.「老齢は社会の害か,老いは喪失か,生への欲求は死に向かって薄れていくのか,老衰は後退か,家族の看とりは当然か,依存は必然か,老いは静寂か,ぼければお終いか」という,著者が過去(1986)に記した老いにまつわる誤謬への問いは今も変らない.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.