研究と報告
正岡子規の看護論—『病床六尺』を中心に
高橋 正雄
1
1東京大学医学部保健学科精神衛生学教室
pp.341-344
発行日 1993年4月1日
Published Date 1993/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904247
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はじめに
『病床六尺』1)は1902(明治35)年5月5日から9月17日まで書かれた,正岡子規最後の随筆である.当時34歳の子規は,結核闘病生活の末期にあって,東京・根岸の自宅で「布団の外へまで足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない」ような状態であった.だが,この「六年の間世間も知らずに寝ていた病人」は,「生きていれば言いたい事はいいたいもの」と,この随筆の中に自らの心情を余すところなく披瀝している.
そこには,不治の病に冒された人間の苦悩や,病んでなお盛んな世俗への好奇心などが赤裸々に語られているが,特に興味深いのは,死に至る病いを抱えた人間が望む看護のあり方が記されていることである.
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