いい本見つけた!
—信田 さよ子 著—『DVと虐待 「家族の暴力」に援助者ができること』
西山 明
1
1共同通信社
pp.660-661
発行日 2002年7月1日
Published Date 2002/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904004
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「家族の暴力」への介入の根拠と実践論
「絶対暴力は許さない」という怒りが随所に表れた,気追あふれる実践書である.「戦場」に赴くときの自らの立場がいかに大事か説かれているゆえに,誰もがすぐに真似できるマニュアル本とは異なっている.「かわいそう.何とか助けてあげたい」という援助したがりのヒューマニストが手軽にハウッーを学ぼうと手にしたら,少々怖気づくかもしれない.閉じられた家族の内部には,権謀渦巻く国際政治世界の小宇宙と同様に,権力構造があることを思い知らされるからである.家族への介入者は旧来の家族観の転換を求められる.ドメスティックバイオレンス(DV)と虐待を「家族の暴力」と名付け,家族は暴力と地続きであると認識することから援助に向けた作業が始まる.
虐待とDVが絡んだ事件が新聞の社会面やワイドショーをにぎわしており,本屋の店頭を歩けば関連した本が平積みにされている.1980年代,私は子どもが自ら語る家族の内部を取材して記事にした.だが,子どもへの親の暴力や夫婦間暴力については,「特殊なケースを誇大視している」と冷ややかな見方が主流を占めていた.その時代から見ると隔世の感がある.こうした巷にあふれる書物や情報を藁にもすがる思いで手にする方もいるに違いないが,翻訳本が多く,自分の経験にリアリティを与え説明してくれるものは,数少ない.
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