連載 カズのカンボジア日記・4
クメール・ルージュの傷跡
崎間 和美
1
1アンコール小児病棟
pp.1168-1169
発行日 2000年12月1日
Published Date 2000/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903638
- 有料閲覧
- 文献概要
●パーティーといえば牛一頭
カンボジアの人たちはパーティーが大好き.チャンスを狙っては「それじゃ,パーティーだ」と企画が始まります.私もそのノリが好きで,ついつい「次はいつにする?」などと拍車をかけています.食べることが大好きな彼らなので準備も大がかり.バーベキューをしようというときに,まず牛を一頭買うところから始まったことには目の玉が飛び出るほどびっくり.昨日まで目の前で草をむしゃむしゃ食べていた牛が,今日は太い鉄の棒を体のまんなかに刺されて焼かれているのですからね.さらに驚いたのが,ドクター,ナース,事務員とたくさんの病院職員が牛のさばき方を知っていて,そのうえ,牛一頭を皮,骨,脳,腎臓や肺まですべて無駄なく食べる方法を知っていたことです.
「すばらしい!」と私は思わず叫びました.毎日たくさんの残飯を出していたことをひとしきり反省.日本の子どもたちは,牧場でモーと鳴いている牛や,海の中をスイスイ泳いでいる魚が,パックに入り店先に陳列されている食材の元の姿だと知らないと聞いたことがあります.何かの犠牲のうえに自分たちが生きていることを忘れてしまっているのですね.それにしてもなぜ,カンボジアの人たちは牛のさばき方や無駄なくすべてを食べる方法を知っているのでしょうか? それは,やはりいやでも身についてしまった戦争のなごりなのだと思います.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.