フロントライン2000 研究
臨床でEBNをすすめるために—Evidenceをめぐる誤解をとく
上井 稔子
1
,
佐藤 千史
1
1東京医科歯科大学大学院医学系研究科健康科学
pp.634-638
発行日 2000年7月1日
Published Date 2000/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903507
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Evidence-based Nursing(EBN)とは
Evidence-based Medicine(EBM)という言葉が広まりつつある.EBMは,1991年にカナダのGordon Guyattが紹介してから1),世界中で使われるようになった.EBMが急速に広まるなかで,医療のマニュアル化などさまざまな誤まった解釈をされた歴史があり,また福井は日本語に移し変えたときに理解しやすいようにと考慮して,EBMを「入手可能で最良の科学的根拠を把握した上で,個々の患者に特有の臨床状況と価値観に配慮した医療を行なうための一連の行動指針」と定義している2).
現在のところ,日本にあるEBMに関連したマニュアル本は薬や治療に関することが多く,それを読んだ経験のある読者も実際はピンとこない場合が多いのではないだろうか.しかしEBMは薬や治療の評価を行なうためだけのものではない.簡単にいうとEBMは,主治医の個人的な経験や出身大学ごとに異なる治療法や,先輩からの助言などの影響を受けることを最小限に,今ある治療のなかで科学的に評価された,より効果の高い治療を得るための方法(あるいは道具)である.さらに,意思決定をする際には患者の価値観を考慮する技術も含まれている.
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