連載 思い出すけっち[あの人、あの時、あの言葉]・24
若き癌患者の残したメッセージ
平塚 陽子
1
1涌谷町町民医療福祉センター
pp.1166-1167
発行日 1990年12月1日
Published Date 1990/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661900274
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Tさん,27歳,独身.両親,姉2人の末っ子で長男(養子).姉たちとは年齢差があった.東北大学を卒業し外資系の会社に就職.大阪勤務で独身寮に入った.独り身の気楽さで夜更しや付き合い酒も多かった.秋になって,時折むかつきを自覚したが,仕事の疲れぐらいに思っていた。忘年会,新年会を迎え,朝の歯みがき時に嘔気や,時に嘔吐があった.二日酔いだと思い,そのうち消失したこともあり,特に気にもかけず春の健康診断を受けた.コンピュータが出した健診結果は「切除胃」だった.
会社の嘱託医から精密検査を勧められ,「胃潰瘍」と診断された.同時に仙台に居る家族に「若年者胃癌(硬性癌)で手の施しようがない,両親の傍で療養するのがよい」と連絡が入った.入院に際し病名は「胃潰瘍」と統一され,5月の連休あけに入院した.明るい性格ですぐ同室患者と仲良くなり部屋はにぎやかだった.
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